海未「蹴りたい背中」【未完】

海未「蹴りたい背中」というファイル名のラブライブ!SS。
冒頭で終わってるしメモもないのではっきりわからないけど、タイトル(綿矢りさ『蹴りたい背中』)からして、海未ちゃんとアイドルオタクのにこちゃんが交流する話だったはず。たぶんにこちゃんが留年生で海未ちゃんと同クラスの設定。
2015年3月から4月。

友だちがいないと言う女子高生は多いけれど、彼女たちの「いない」は「平均より少ない」の意味であって、「ナッシング」のことではない。
私にはいない。
本当にいない。
少なくともこの一年生の教室には。

一学年たった二クラスの学校でこの世でたった二人の幼なじみと離れ離れ、私だけ一人の学園生活、そんな最悪の高校デビューをいまさら嘆いてみても始まらない。
始まらないのはわかっているが、他にすることもないので、そうしてしまう。
始まらないというか、すでに始まってしまっているのだ、私のこのしょうもない高校生活は。
ざわざわと騒がしい教室にうんざりするが、耳をふさいでしまう訳にはいかない。
そんなことをすれば本当に頭がおかしいと思われる。
いっそのこと頭がおかしくなってしまえば、こんな状況も少しは愉快になるのかもしれない。
だけどそれも悲しいな。うん。
ああ、穂乃果がいない。ことりがいない。


「海未ちゃんいないなんてのさびしいよう」
入学式の当日、穂乃果はこの残酷なクラス分けを知るとすぐに私に泣きついた。
文字通りに涙を流しながら、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。
穂乃果にそんな風にされて「ああうれしい」と思いながらも、反面で彼女に対して理不尽な怒りを感じてもいた。
さびしいとは言うけれど、穂乃果はいいでしょう。
ことりが一緒なのですから。
それにくらべて、私はひとりだ。
ひとりなのだ。完全に。完全にソロライブ。
教室に入れば、「さびしい」と言う相手もいない。
それに、もし私たち三人のなかで離れ離れになるのが私ではなく穂乃果だったら、事態はもう少しマシだったろう。
穂乃果は私と違って人懐っこく、こだわりなく誰とでも友だちになれるタイプだ。中学時代もそうだった。
きっと「さびしい」なんて言うのは最初の一日だけで、すぐに新しい友だちの自慢を始めるに違いない。
……穂乃果がひとりになればよかったのです。
ワンワン泣き喚く穂乃果の頭を撫でて慰めてやりながら、そんな八つ当たりじみた残酷なことを考えていた。
私は腹が立っていた。
怒りをぶつける相手がいないことにも腹が立っていた。
こう言う場合、慰めるのは穂乃果で、慰められるのは私じゃないのですか?
違いますか、ことり?
ことりは穂乃果の背中越しに、同情半分、申し訳無さ半分といった目つきでこちらを見ていた。
まるでクラス分けの責任が自分にあるとでも言うみたいに。
それからジェスチャーで「海未ちゃん、がんばって」と伝えてきた。
ありがとうございます、ことり。どうにかがんばります。つらいけど。本当に悲しいけど。
それからもう一つジェスチャーで「穂乃果ちゃんのことは、ことりにまかせて、安心してねっ」と言ってきた。
うるさい。
そうして私の高校生活ははじまった。
そして私には友だちがいない。

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