結衣「親知らず」【未完】

結衣「親知らず」
2014/07/10

 長いキスのあとで京子は言った。
「結衣ばっか、ずるい」

 7月もなかばの土曜日。
 肌と肌が触れ合うだけでじっとりと汗が溜まる、蒸し暑い日のことだった。

 身に覚えのない非難に私が戸惑っていると、もう一度呟くように京子は繰り返した。
 結衣はずるいよ。
 その目にはほんのすこしの涙が光っているように見えた。

 京子とはじめてキスをした日から、もうかなり経つけれど、それでもまだぜんぜん慣れない。
 こういうことをするときは、いつも私の部屋で、たいてい二人っきりの休日に、かならず京子から。
 部屋で、京子が私のとなりに座る。
 右手で私の左手をつかまえて、瞳で私を射すくめて。
 そうされるだけで、私は動けなくなる。
 京子の青い目がじっと私を見つめている。
 私は呼吸も出来ないほどに固まってしまって、苦しいくらいに心臓が早くなって、これからどんなことをされるかわかっているのに、拒むことも、自ら受け入れることも出来ないくらいに身動きができない。
 京子は、そんな私を見ていつも「にひひ」と笑う。
 私は京子の綺麗な瞳にうつっている自分のなさけない顔を見たくなくて目を閉じる。
 まぶたの暗闇の向こうで京子が手を伸ばす気配がして、その手が私の髪に触れるか触れないかといった程度に撫でると、それから唇に
 …………何をいってるんだ、私は。

 いつも京子にはめちゃくちゃにされてしまう。
 お互いがひとつになってしまうくらい強く抱かれて、頭を撫でられて、口の中のやわらかいところをぜんぶ京子に知られて。
 汗なのか涙なのかわからない液体で顔中がグチャグチャになるころ、ようやく京子はゆるしてくれる。


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