梓「りっちゃん、えさだよー」本文.txt【未完】

中野梓がフェレットに「りっちゃん」と名付けて可愛がってるやつになるはずだった。

 たとえば自宅は気が休まる場所なわけで、そこにヤなやつが押し掛けてきたりしたら
 ああもうっ、てなるわけだし、っていうかたとえばじゃなくて現実に律先輩は
 いま私の家にいるわけだけど、っていうかいるだけじゃなくて台所に立って
 包丁でざくざくなにか刻んでぐつぐつ煮立つ鍋をかきまわしフライパンに油を引いて、
 なに、あの人、私の家で料理をしてるんだ、どうしてあいつが私の家で料理をしなくちゃいけないんだ?
 って思うけど、ほんとにそれが事実なわけで、ああ、もうっ、先輩のお節介、
 やってらんないなあ、って思うけど、ほんとにもうそれが現実なのだ。
 ああ、頭が痛い。

律「あずさー、煮物はうす味と濃い味どっちがいい?」
 なーんて、律先輩のくせして、まるで新婚ほやほやの奥さんみたいなこと聞いてくるので、
 そんなことどっちだっていいって答えてやったら
 じゃあ私の好きな味にするぞ、だとさ。
 ああはいはい、お好きにどうぞ。

 なんでこんなことになったかと言えば、話は少しさかのぼる。
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律「梓、さいきんなんか変なにおいしない?」

 と、律先輩が言ったのは軽音部のティータイム中のことだった。
 澪先輩ムギ先輩、それにそれまでぎゃーぎゃー騒いでた唯先輩と、
 ついでにその唯先輩と一緒に騒いでたさわ子先生までがぽかんとした表情で
(あとに言った二人はほんとに「ぽかーん」と口を開いていたのだ、ばかみたいに)
 律先輩の真顔を見詰めた。
 私も「なに言ってんだコイツ」との想いを視線に表してみる。

梓「……お風呂には毎日入ってますけど」

 なに言ってんだコイツ、とは思ったわけだけど、さすがに腐っても先輩、
 馬鹿でも先輩、おたんちんのオッペケペーでも先輩なわけだから、
 そこは礼儀正しい私のことだ、そんな暴言を吐くわけにもいかず
 口調にだけ「なに言ってんだお前」的な毒を込めて反論してみました。
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 先輩はそれがわかったのかわからないのか、わからないけど、

律「ああ、違う! ごめん、くさいとかそういう意味じゃないから」

 と慌てたようすで手を振る。
 当たり前だ、私がくさいわけないです、って思うけどちょっとは傷ついてはいるけど、
 まあ、律先輩の言うことだ、いちいち気にしてたら一日が何時間あっても気にしたりない。

澪「律、失礼だろ」

 馬鹿の唐突な発言への驚愕から回復した澪先輩が、たしなめるように言う。
 いえいえいいんです、澪先輩。
 そんなに気にしていただかなくったって。
 わたし、律先輩の言うことなんてまったくもって動物の毛ほども気にしてませんから。
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律「だからほんとにへんな意味じゃないんだって!
 なんかちょっと変わったにおいと言うか……」

 それのどこがへんな意味じゃないんだ。

唯「あ、でも私もそう思ってたかも」

 今度は唯先輩に注目が集まる。

唯「あずにゃんぎゅーっ、てしたとき、なんか前と違うにおいがするって言うか……
 はっ、もしかしてあずにゃん、私以外の女が出来たの!?」

梓「なに言ってるんですか……」

 自分で言ったセリフに大げさな動作で驚く唯先輩にツッコミを入れながら、
 それでもようやくこのあたりで私も「ひょっとしたらアレのことかな」と気付き始めたのだ。

律「やっぱり唯もそう思ってたか?」

澪「そうか、私はよく分かんないけど」

律「嗅いでみたらわかるって」

 やめてください。
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 なんとなく「原因」は分かったけど、律先輩に教えるのもなんかいやだしめんどくさいので、
 そのことについては黙ったまま私は立ちあがった。
梓「ばかなこと言ってないでいい加減練習しましょう」

唯「ええー、もうちょっとゆっくりしようよー」

さわ子「そうよお」

梓「先生は練習中もお茶飲んでるだけじゃないですか!」

さわ子「てへっ」

 なおもぐだぐだ言う二名を放置して一人でギターの用意をしていると、
 いつもと違って唯先輩さわ子先生のノリには加わらず、なんだかまじめな表情で
 と言って椅子に座ったまま練習の用意をするわけでもなく、

律「でもいやな匂いじゃないんだよな。なんか懐かしい感じっていうか……」

 なーんて呟いてた。

 ああ、やだやだ。なんかやだ。
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 放課後私は

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